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勝手に紙面研究会<3月11日> [紙面研究]

いまやっている仕事柄、出勤日は3大紙と言われる、朝日、読売、毎日の新聞が読める(朝日に至っては、13版と14版両方読める※14版は印刷所に近い地域に配られる版で、締め切りが13版より遅いので、より最新の情報が載っている)。
読めるどころか自分専用なので、家に持って帰ろうが、気になる記事をスクラップしようが自由という“文字好き”には恵まれた環境だ。

というわけで、3月11日の3大紙の紙面を見比べてみよう。
2021年3月11日は、東日本大震災から10年ということで各紙特集を組むなど大展開。

■1面の見出しは、
【朝日】
東日本大震災 避難なお4万人超
10年 東北と歩む
被災地の人口減 沿岸地で再加速
(寄稿コラムなど)
「命を守る」教訓根付くまで (東北復興取材センター長(仙台総局長))

【読売】
東日本大震災10年
津波被災地インフラ膨張 上下水道・道路 維持費年131億円増 本紙調査高台移転要因
避難者なお4.1万人 追悼式きょう各地で
(寄稿コラムなど)
復興 立ち向かう意思 (編集委員)

【毎日】
東日本大震災10年 避難なお4万人
墓誌刻む 災害はくる 長男一家失い 自宅を離れた月日
(寄稿コラムなど)
あの日の私・未来の私 止まった時計 宝物 (20歳の専門学校生)
(※あの日の私・未来の私 は、各面肩に展開)

<1面総括>
 1面の紙面インパクトでいえば、朝日が目を引く。朝の海に向かって手を広げる被災男性の後ろ姿を大きく写真で紹介。ただ、写真を主にしたせいか、記事内容は被災地の人口減などをサラリと紹介した印象(2・3面で人口減の問題など掘り下げ)。
 読売は発生から10年経ち、被災地が直面する課題(インフラ整備費)を記事の軸に置いた。編集委員のコラムは、「町の復興をどうとらえるか」という内容で、内容はやや情緒的に感じたが、1紙面のなかのバランスをとる意味では、新聞らしい構成に感じた(2面はいきなり通常紙面、3面で1面の掘り下げ)。
 毎日は長男一家を失った男性の取材記事で当時を振り返り、災害風化への警鐘とした。記事内容では一番読ませる内容だった。とはいうものの、朝刊1面「らしさ」でいうと、個人の体験をメインに据える構成で良かったのか、という気もしなくはない。10年後の今被災地が抱える人口減などの課題は、2・3面に集中させているので、1・2・3面でバランスをとる方針だったのかもしれない。

■社会面・対社面の見出し(テレビ欄の裏とその対面)
【朝日】
あの日の言葉 力もらっているよ
帰宅できず「備えが必要」
家族失った悲しみ 若い世代へ「授業」
など

【読売】(見開き構成)
今旅立つ
支え胸に
父子ふたり 野球の絆 母と弟・妹犠牲 18歳上京へ
児童ひとり 地域の輪 浪江の小学校この春休校
など

【毎日】(見開き構成)
妹よ もう泣かない 笑顔の思い出と前へ
痛み語る 君の分も 10日間の恋 胸に刻み
など

<社会・対社面総括>
 朝日は社会面をほぼ一面まるまる使って、ある被災家族の10年を振り返った記事。対社面では別の被災者の10年。見開きで見たとき、情報量という意味で(紙面の面積でも)左右の記事のバランスが違いすぎる気がした。
 読売は、見開き・左右対称の非常に凝った構成。社会面紙面上部で岩手・宮城の10年、対社面で福島の10年を写真で振り返り、紙面中央に2つの記事。社会面で家族を亡くした父子の10年。対社面でこの春休校する浪江の小学校の記事。見出しも、ふたりとひとり、絆(結び目)と輪(わっか)が対比している。見出し、レイアウトともに非常に練られた紙面。
 毎日も読売と同様見開き構成。対社面の記事、10日間の恋の記事は切ない内容だった。震災の10日前に交際を始め、女性は亡くなり男性は助かった。18歳の10日間の恋だけれど、10年経った28歳の今も痛みは消えない。3紙の社会・対社面の記事の中では、一番内容が心に残った。

■その他
その他、紙面の組み方で光ったのは、毎日の運動面(スポーツ欄)。
左右対称の紙面構成。紙面上部に黒地・白抜き文字で、
東日本大震災10年 コロナ禍の今
再び見せようスポーツの底力
と、横見出しを配置。
紙面中央(←書籍の言い方ではノド)にも左右対称で、
楽天・早川 優勝は使命
羽生 傷、向き合う運命
と同じ長さの縦見出しを置いた。見出しの最後の文字を「命」で終えているところにも、編集者の思いが感じ取れる。見開き展開は、社会面と対社面では最近よく見るが、運動面でもやったところに個人的にぐっときた。

読売・特別面の、「戻らぬあなたへ」は、残された人から亡くなった人への手紙。見開きで30人以上の人の思いが掲載されている。亡くなった人の顔写真も載っていて、読んでいて涙が出た。写真特集、3.11の被害をグラフィックで表現した特別面も迫力があった。
※朝日と毎日は別刷りで特集を掲載。

広告では、毎日のradikoの見開き広告が目を引いた。朝日、読売には掲載されていなかった。
メインコピーの、「日々はそれだけで、宝物だ」は、本当にそうだとシンプルに感じさせる。

<全体総括>
 紙面全体で見たときに、読み応えがあり迫力があったのは読売。ただ、朝日、毎日は別刷りで特集していたので、その内容は考慮に入れていない。
 個人的に別刷りはあまり好きではない。一綴りになっていると、紙面をめくっているうちに意識せずとも目に入る記事があるけれど、別刷りだと朝忙しくて脇によけるとそれっきりになる。

 3.11の前後も含めて、新聞の底力を感じたのは、朝日の「今、伝えたい千人の声」。2012年の連載で紹介した被災者(一部)の声を、2021年の今、再訪して紹介している(提供かも)。たくさんの人の10年前と10年後を一度に追いかけられるのは、新聞ならではと思う。テレビでもできるけれど、どうしても特定の人の紹介に寄ってしまうだろうし、ネットの単体サイトでは、そもそも10年前に取材した人に連絡して、再度話を聞かせてもらうということ自体、意義はあるけどお金に直結しないし、やろうという人は出なさそう(大企業のサイトでの企画ではあるかもしれないけど、どうしても広告寄りな紹介になりそう)。

一度印刷して世に出したものは、10年経っても変わらないというのが、紙媒体の凄さだと最近つくづく思う。そして、一続きの内容をこうして手軽に比較できるのも、紙の新聞ならではかと。(新聞社のサイトではやる気にならん)。

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せっかく3紙見比べられる環境にいるし、勉強になるので、時々やろうと思います。
言うまでもないですが、ここに記した内容は個人の感想です。

新聞つながりでもういっちょ。
先日、映画「新聞記者」をテレビでやっていたので見たけれど、うーん…、私には合わなかった。
とにかく画面がすっごく暗い(内容もだけれど)。いくらなんでもそんな暗がりで仕事せぇへんで。あまりにも暗いので、途中寝てしまって見返したわ。
あと、スキャンダルの内容がなぁ、え、急にそんな大きいこと出してきた?っていうとってつけた感があった。もうちょっとくだらなかったり、人間のいやらしさみたいな部分が出ている方が、「こんなことのために…」という無力感や絶望感が出たと思うんよなぁ。
もしかするとあの内容は、「映画よりも今、起きている現実のほうがひどいでしょ」と感じさせるためだったのかな。

同じ新聞記者ものだったら、スポットライト世紀のスクープのほうがよかったな。
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