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きちんとした仕事 [本]

随分前にピエール・ルメートルの「その女アレックス」を読んだ。
評判に通りすごかったけれど、この本を「面白かった!」と人に勧めるのはちょっと抵抗があって、そのままにしていたのだけれど、先日、図書館で「悲しみのイレーヌ」と「傷だらけのカミーユ」を借り、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ3部作を読了したので、やはり感想を。

まず、私が最初に読んだ「その女アレックス」は、3部作のうちの真ん中にあたります。
悲しみのイレーヌ、その女アレックス、傷だらけのカミーユという順で読むのが正しいのですが、なんで真ん中から読んでしまったのかというと、日本語訳が出たのが「その女アレックス」が最初だからなのです。
加えて、3部作のなかで一番評価が高かったこともあって、一冊読んでみて面白かったら3部作全部読もうというくらいのつもりでいたのですが、冒頭に書いた通り「面白かった!」と手放しでいうにはちょっと抵抗があり、残りを読むのがかなり遅くなってしまった。

前置きが長いですが、アレックスは、描写がすごく残虐だったんですよね。
読んでいて気持ちが悪くなったし、これを「面白い」と人に勧めたら、ちょっと人間性が疑われるかなと心配になるくらい。でも、ぶっちゃけ面白い。読後、思わず最初から読み直してしまったぐらい。
つまり、アレックスは、伏線ばりばり、どんでん返してんこ盛りのミステリで、長年の読書が祟り素直さを失くしてしまった私も見事にどんでん返されたという作品だったのです。

で、時間をかなり置いてから、「悲しみのイレーヌ」を読んで、またしてもどんでん返された(そして、やはり残虐だった)。
アレックスの著者だから、何か仕掛けがあるぞと思っていたし、3部作の真ん中を読んでしまっているので、登場人物のその後も知ってしまっている状態でありながら、してやられた。
「は~、そう来ましたか」という感じ。

その点、さすがに完結編の「傷だらけのカミーユ」は、前作、前々作ほどの意外性はなかった。
とはいえ、仕掛けはあるし、ちゃんと順番通りにそれなりの時間の間隔を置いてから読んでいたら、騙されていたかも。

残虐な描写はありますが、お勧めです。で、読むときは、やっぱり1部の「悲しみのイレーヌ」から読むことをお勧めします。
事件は派手ですが、捜査が地味なところもいいなと思います。そして部下のルイがすごく良い。
ただ、海外小説の苦手なところは、名前が覚えにくいところ。
フランスではグエンという名前、佐藤とか田中みたいによくある名前なんだろうか。別人でグエンが2人出てきたらもうお手上げ笑(3作目でカミーユの友人の警視と法医学者が同じグエンだった)。

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タイトルの「きちんとした仕事」は、「悲しみのイレーヌ」の原題「Travail Soigne」からとりました(最後のeは、フランス語のアクサン・テギュという記号「´」がついています)。
日本語のタイトルはすべて登場人物の名前が入っていますが、原書ではそういうことはないみたいですね。
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